ソーチェンの目立てについていろいろ講釈を垂れるほど知識も技量もないのですが、私の目立てでもそこそこ切れるようにはなるので、ポイントさえ押さえれば誰でも切れる目立てができると思います。
確かに目立ては奥が深いともいえます。
わかる人、こだわる人は木の種類によっても目立ての仕方を変える方もいます。
私などは良くわからないので、すべてのソーチェン同じやり方で目立てしています。
それでもこれくらいまでは目立てができます。というのをこのブログの最後に動画で紹介します。
排気量30ccチェンソーで乾燥したケヤキだったと思います。
かなり堅い木でした。
さて、目立ていくらやっても切れない。どこを目立てすればいいかわからないという方に少しでもお役にたてればいいと思います。
ソーチェン各部の名称がいろいろと出てくるかもしれません。
名称と場所がわからない方はこちらも合わせてご覧ください。
▼ソーチェン名称それでは新品のソーチェンで説明していきます。
チゼル刃(角刃)です。

赤い点線に注意してください。

境目がわかると思います。

矢印部分が境目で少しえぐれています。

カッターを外側から見ます。
上刃(トッププレート)の厚みのところに境目が来ていると思います。
マイクロチゼル刃です。



マイクロチゼルもチゼル(角刃)も同じような感じで目立てしていると思います。
私はマイクロチゼルも角刃も同じ丸ヤスリで同じように目立てしても大丈夫だと思っています。
新品のチェンソーは丸ヤスリで目立てしているわけではありません。
機械で目立てしていますし、ヤスリは円盤状のものです。ジスクグラインダーの砥石のような感じです。

機械とぎの場合、上刃は砥石の平面部分で目立てされています。
横刃はヤスリの端、半円状のところでとがれています。
赤い点線のところがヤスリの平面部分と端の境目になるかと思います。

上刃の厚さのところまで平面部分で研いでいると思います。
(機械砥ぎで大量生産なのでそこまでシビアに砥いでいるわけではないと思います)

ここで最初のポイントですが、上刃切削角です。
上刃切削角は55度くらいといわれていますが、角度を55度きっちりに出すということではありません。(60度前後でも問題ないと思います)
丸ヤスリで目立てする場合

上刃目立て角を55度位にするには上写真のような感じで丸ヤスリを当てなければなりません。

4~5mmの丸ヤスリで上刃切削角を55度くらいに出すには、丸ヤスリの赤い点線の範囲内で上刃を目立てしなければなりません。
4~5mm丸いヤスリの1mm位のところで目立てするのです。
矢印部分を見てください。丸ヤスリは下に接触していません。

良くやりがちな失敗です。
丸ヤスリが下側に当たり横刃だけを研いでいることになっています。
上刃は全く目立てされていません。
4~5mmの丸いヤスリの1mm程度の決まった高さで目立てをしなければなりません。
これは、神業だと思います。
目立て名人といわれる人はこれができるのだと思います。
訓練しなければならないのか?
心配する必要はありません。
丸ヤスリの高さをきっちり合わせる道具があります。
それを使用すれば丸ヤスリの位置をきちんと合わせてくれます。
※上刃をしっかり目立てできる。ここがポイントです。

スチールから出している目立て道具です。
(当店ではネット通販していませんが、ネット通販しているところもあるので遠隔地の方でも購入することはできると思います)

この道具を使用すると図のように高さを決めてくれます。
昔はこのような目立ての道具を使うのは素人だという風潮が少なからずありました。
しかし、私は道具を使うから素人だとは全然思いません。
逆に使う人のほうがきれいに目立てできると思っています。
確かに神様レベルのひとはいます。
指先だけで数ミクロンの違いを検知できる人がいるというのもテレビで見たことがあります。
町工場で働く職人さんに多いと思います。
ただそのような人はまれです。
道具は普通の人でも神業までとは言いませんが、正確にできるとおもいます。
たとえば私がフリーハンドで直線を引くよりも、小学1年生が定規で線を引くほうがはるかにまっすぐな線を引くことができると思います。
それが道具です。
木を切ることが仕事なので、目立てなどはできるだけ道具を使用して正確に手早くやるほうがいいと思います。
話が前後しますが、角刃も丸ヤスリで目立てできます。

カッティングコーナーにもきちんとヤスリが当たっていると思います。
道具を使って目立てすることもできます。
角刃だからと言ってあまり難しく考えなくてもいいと思っています。
機械目立てですが、私はマイクロチゼルも角刃も同じように目立てしています。
次にペフォードダブルベベル平ヤスリについて。
このヤスリについては使いやすい使いにくいなど賛否両論ありますが、私はペフォードダブルベベルヤスリはどこをどう目立てすればいいか良くわかるようになるのでいいと思っています。
私自身、丸ヤスリで目立てしただけのものより、最後の仕上げでペフォードダブルベベルヤスリを使ったほうが切れ味がいいと感じています。

このような感じで目立てします。

4~5mmの丸ヤスリだとどのように目立てしているか分かりずらいと思います。
上刃切削角を55度くらいで目立てしている部分は1mm位です。
ペフォードダブルベベルヤスリだと

平面の部分が丸ヤスリの1mmの部分になります。
丸ヤスリだと1ミリ高さが変わるだけで上刃切削角の研ぎ角が大きく変わります。
ペフォードダブルベベルヤスリだと平面の部分は大きいので角度がどれくらい出ているか目視できます。


ヤスリは平面なので、上刃はストレートになります。
ペフォードダブルベベルヤスリの平面部分はどのようにあてればいいか?
新品ソーチェンの形を見て平面部分は上刃だけを研ぐようにすると目立て機械の円盤ヤスリと同じようになると思います。



こんな感じでいいかと思います。
実はどれくらいがいいか私は良くわかっていません。
実際はもう少し下まで平面部分で研いでいるかもしれません。
これ以上はすごく長くなってくるので今回はやめておきます。
当店でペフォードダブルベベルヤスリ購入時には簡単な資料をお付けしています。
▼ペフォードダブルベベルヤスリペフォードダブルベベルヤスリはどこをどのように砥いでいるかわかりやすいのでその点がいいと思います。
どこをどのように砥げばいいかわかってくると思います。
次のポイントです。
ソーチェンの目立てのことを良く理解していない方がたまにいます。
林業家の方の中にはこまめにチェンの手入れをする方がいます。休憩のたびに目立てをするのです。
その話を聞いてソーチェンの目立ては、目立ては丸ヤスリを2~3回ずつあてるだけでいいと思っている方がいます。
切れているチェンをさらに切れるようにするときはそれだけの回数ヤスリを当てるだけでいいですが・・・
ダメージがひどい場合は、ダメージ部分をすべて削り落とさなくてはなりません。
ひどい場合は、かなりの回数ヤスリを当てなくてはいけません。
次のソーチェンは石のような硬いものを挽いたと思います。ダメージはかなり大きいです。

カッティングコーナーをご覧ください。矢印部分。
丸くなっています。
ソーチェンのカッター部分はクロムメッキされています。
このクロムメッキが硬くここで木を切っています。
メッキがすべてはがれてしまった場合はそのソーチェンは目立てしても使い物にはなりません。
今回のケースは、まだメッキが残っているので目立てできます。
ただし、このソーチェンは赤い線まで削り落とさなければ切れ味は戻りません。

ここまでダメージがひどければすぐわかると思うのですが、ダメージが少ないとパッと見、わからない時があります。
このソーチェンのダメージも1~2mm程度です。
ここまで拡大しているので良くわかると思います。

0.1mm位のダメージでも切れ味は落ちます。
切れ味の良しあしは、切削屑を見ればわかります。
切削屑が粉に近くなればそれはもう目立てが必要です。
ここがポイントです。
メッキのところまでとにかくしっかり目立てします。
次のポイントです。
カッター部の目立てはしっかりできているのに、木が切れないというときはデプスが高すぎます。
カッターは逃げ角がついているので、前方より後方が下がっています。
目立てを繰り返したり、一度に大きく削り落としたりした場合は、デプスに対して刃は下がったようになります。
刃が出ていないので、木は切れません。
目立てしたのに切れ味が悪いと感じた時はデプスをチェックします。

刃とデプスの高さの差はほとんどのソーチェンで0.65mmです。
この差が0.3mmとか少なくなると切れ味が悪くなったと感じてきます。
逆に差がありすぎると振動が激しくなったり、ソーチェンが食い込みすぎて回らなくなったりします。
0.65mmきちんと出します。
1mmより小さい高さを目視で出すのは至難の業です。
心配入りません。これにもデプスゲージという道具があります。
▼こちらオーソドックスタイプがお勧めです。(ほとんどのソーチェンで使用できます)
使い方

これで切れる刃になります。
これでもまだ切れないという方はこれが必要です。

ルーペです。
私は目立ての際は必ず使用します。
これがないとダメージやデプスの高さなどわかりません。
ルーペを使用しながらデプスを確認します。
ルーペを使えばダメージの度合いメッキの有無などがわかると思います。
上刃目立て角、横刃目立て角も重要ですが、上刃切削角をカッティングコーナーのメッキ部分までしっかり削りだすことです。
(切れない時は、メッキのところまで切削角が出ていないことが多いです)
そして、デプスの高さを調整することです。
私にとって重要な道具は、ルーペです。(見えないことには始まりません)(笑)
目立てができないという方の目立て後のソーチェンをいろいろ見てきましたが、ほとんどの場合上刃切削角がメッキ部分まで出ていない状態でした。
要するにメッキのあるところまで削りだしていないことがほとんどです。
そして、デプスを調整していない。
あまり深く考えなくても目立ての道具を使用して、きちんとカッティングコーナーまで削りだすこと、そしてデプスの調整
これでそこそこ切れるようになります。
切れない時はルーペで確認してください。
最後に動画を紹介します。
この動画は以前にも紹介しました。
今回紹介したダメージのあるソーチェンの目立ては丸ヤスリで手で研ぐのは大変です。
こういう時は機械で目立てします。
スチールのUSGという目立て機械を使用しています。
(意外といい機械だと思います)
※今回の記事は数日かけて書いていたので、書いている内容が飛んでいるかと思いますが、ご了承ください。
書いて説明するというのは難しいですね。
それではまた。
正式名称はデプスゲージジョインターなのだと思います。
ただ、古くからのハスクバーナチェンソーの販売店は、カッターについているのをデプスといい、デプスを計測する道具をデプスゲージと言っていました。
その名残りです。(笑)
ハスクバーナのカタログでは今でも道具のほうをデプスゲージと記載しています。
デプスゲージジョインターは最近使われだした名称だと思います(日本業界内)
デプスゲージジョインターが間違いが少ないかもしれません。
ただ、古くからのチェンソー販売店はデプスゲージジョインターというと「それは何ですか?」と聞き返されるかもしれません。