28年前のチェンソーが修理に入ってきました。


5.6kgで排気量43ccだったようです。
エンジンを始動させてみるとすんなりとエンジンがかかり、空ぶかしでは何の問題もない感じでした。
症状を聞いてみると、最初のうちは調子よく使えるが、しばらくするとエンジンの回転が下がり切れなくなるということでした。
15分か20分くらいでその症状が出てくるそうです。
一番最初に考えられることは
?まず電気系統です。
イグニッションコイル、イグニッションモジュールの故障です。
完全に火花が飛ばない状態ならば、テストプラグで調べるとすぐ分かるのですが、しばらく使用してチェンソーが温まってきて症状が出る場合はテストプラグでも分からないときがあります。
エンジンが温まってエンジンストップし次にエンジンがかからないという症状の場合、そのときにテストプラグで点検すると火花が出ていないことが確認できます。
しかし、エンジンの回転があがったり下がったり途切れるような感じの場合は、火花が出ていたり出ていなかったりするので、このときもテストプラグで点検しても火花が出たりするので、判断が難しくなります。
(エンジンの途切れ方や音で、電気が悪いかどうか修理をこなしていくとわかるようになります)
今回は、無負荷の状態では症状が出てこなかったので、実際にしばらく10分くらい木を切ってみました。
すると症状が出てきました。
経験上電気系が悪いと思いましたが、何せ古い機械ですので注意が必要です。
電気系が悪いだけでなく、複合的に悪いかもしれません。
一応考えられるところを、点検していきます。
?エア抜き

赤い丸の部分がエア抜きです。
チェンソーに限らず、エンジンを始動していると燃料が減ってきます。
するとタンクの中は負圧になってきます。
そのままの状態だと燃料がキャブレターに供給されなくなるので、燃料タンク内に燃料が減った分空気を入れてあげなくてはなりません。
それがエア抜きです。(スチールではタンクベントといいます)

028のエア抜きはゴムホースにネジが差し込まれています。

細いマイナスドライバーでこのネジは取り外すことができます。
古くなるとゴムホースの劣化やゴミの混入で空気が入らなくなることがあります。
一度取り外して、ゴムホースを少し切り取りまたネジを差し込みます。
それで様子を見ます。

ネジ自体は直径2mm強の太さの小さいもので通常のネジとは違いますのでなくさないように注意します。
(横道にそれます)
今現在のスチールチェンソーのエア抜き(タンクベント)はとても優れています。
環境問題に配慮し燃料および気化した燃料も大気中に排出しないようになっています。
このスチールのタンクベントについては1年前くらいから紹介しようと思っていましたが、いまだ紹介していませんでした。
機会があれば紹介したいと思います。
(話を戻します。)
?キャブレターを分解点検します。
キャブレターの中に少量の水やゴミが入っているときもたまに同じような症状になることがあります。
ほとんどの場合最初から調子が悪いことが多いのですが・・・
今回はゴミや水が混入している形跡はありませんでした。
ただメタリングダイヤフラムが少しくたびれているかと思いましたが、これくらいは大丈夫でしょう。(エンジンはすぐかかるししばらくは調子がいいので)
?ピストンのスカート部の磨耗
ピストンのスカート部が磨耗してくるとエンジン始動性が悪くなったり、アイドリングが安定しないということは知っていましたが、技術の方が言うにはエンジンが温まったときに似たような症状を起こすことがあるそうです。

キャブレターを取り外して中を覗き込みます。

ピストン側面はやはり古いこともあり、磨耗が進んでいるようです。

青い矢印部分、分かりづらいと思いますが、隙間があります。
0.5mmほどでしょうか。
これも原因のひとつとなるのかもしれません。
しかし今回の件はおおよそイグニッションモジュールの不具合だと思います。
修理するとなると工賃、部品代送料等で、2万円強となりそうです。
お客さんに修理するかどうかをとりあえず確認してから修理することにします。
また、修理するにしても古い機械なので、そのほかの部品も修理後しばらくして調子が悪くなる場合もあると断りを入れておかねばなりません。
そして部品供給がすでに終了しているチェンソーで、部品在庫があるものとないものがあるということも断っておかなければなりません。
この当時のスチールチェンソーは金属性部品を多用していて、耐久性の高いチェンソーです。
ただし、かなり重量はありますが・・・
耐久性が高く、まだまだ動く機械なのですが、部品の供給が終わっているので修理ができない場合のあるので注意が必要です。
オークションなどで古い名機といわれるチェンソーを手に入れても部品供給が終わっていて、使い物にならないということもあるので注意しましょう。
イグニッションモジュールを交換する場合はまた紹介したいと思います。
それでは。
どうも、置き方が悪かったみたいで、吸入口のエアー抜きから漏れていたみたいです。
点検したら問題なしで、給油したらエンジンがかかりました。