「タンクベント」 なんだろうと思うかもしれませんが、エア抜きのことです。
エア抜きとは燃料タンクなどについているもので、空気をタンク内に取り入れるシステムです。
燃料タンク内の燃料が減っていくとその容量分の体積がなくなることになります。
するとタンク内は外気圧と比べると負圧になり、負圧になると燃料がキャブレターの方へ上がっていかなくなります。
キャブレターのポンプダイヤフラムがいくら燃料を吸い上げようとしても負圧が大きくなると燃料は上がってこなくなり、最後にはポンプダイヤフラムが変形してしまいます。


(左が変形したダイヤフラム、右は正常なもの)
このポンプダイヤフラムは2回しか使っていないチェンソーのものです。
エア抜きが正常に作用していなかったのでたった2回の使用でもこのようになります。
エア抜きが正常に作用していないと、チェンソーにどのような症状が出てくるかというと、燃料満タン時にエア抜きが詰まってしまうと数分でエンジンがストップしたり、ふけ上がりが悪くなります。
燃料が少ないときは症状が出にくくなります。
燃料が満タンのときが負圧になりやすいからです。
エア抜きが悪いときは燃料タンクキャップを開けたときに空気がタンク内に進入する「シュ」という音がします。
点検するときはエア抜きが取り外せるものは取り外し口ですったりして点検できます。
ただしガソリンが口に入ったりしますので、十分注意してください。
(本来は加減圧の工具を使用して点検する)
取り外しが効かないものは、燃料を満タンにいれエンジンをしばらくかけてエンジンの調子が悪くなってから、燃料タンクのキャップをあけたときの音を確認します。
先ほどいったような音がし、もう一度キャップを閉めエンジンをかけてみてエンジンの調子が良くなっていればエア抜きが悪いということになります。
エア抜きが悪くなっても燃料キャップを開け閉めすると、だましだましですがエンジンは掛かり機械は使用することができます。
しかし最初にも言いましたようにポンプダイヤフラムが変形することがあるのですみやかに交換したり清掃したりする方がいいでしょう。
エア抜きはメーカーによっていろいろな形があります。
細かい穴が開いているだけのものから複雑なものまであります。
(ほとんどのメーカーが簡単な仕組みのものです)
スチール社のエア抜きはその中でも複雑ですが、優れていると思います。
複雑なので壊れやすいという欠点はあるかと思いますが、それを差し引いても優れていると思います。

分解図と仕組みを説明します。
圧力が燃料タンク外側(1)と内側(2)で同じになると、ダイヤフラム(3)がバネによりバルブプレート(4)に押されて、バルブが閉じます。

燃料がタンクから無<なると、最初はタンク内(2)が真空になります。
その真空によりダイヤフラム(3)がバルブプレート(4)から持ち上がり、バルブが開きます。
空気が燃料タンクヘ流れ込みます。
これにより、ダイヤフラムの両側の圧力が平衡します。
両側の圧力が平衡すると、バルブが閉じます。このように一方向にしか空気の流れが起きません。
タンクベント(エア抜き)から外にガソリンが気化した物が出て行きません。
環境にも人体にもやさしく、ガソリンの一番爆発力がある成分を逃がさないことになります。
ガソリンの劣化を防ぐことになります。
また気温の変化によりガソリンの気化凝集による空気の出入りが少なくなり燃料タンク内に結露が発生しにくくなります。
燃料自体の逆流も防ぐことになります。
タンクベントは空気の逆流を防ぐので、あまりに高温になる所に機械を長時間置いておくと燃料タンク内の圧力が高くなり、キャブレターに燃料が行き過ぎてしまうこともあるそうです。
長期間使用しないときは燃料タンクから燃料を抜いてから保管するようにします。
これはどのような機械にもいえることです。
最後に少し気になった事があったので、お知らせしておきます。

これはチェンソーのタンクベントです。
タンクベントはキャブレターの脇にあることが多くエアフィルターが空気を吸うのでゴミが集まりやすいです。
この写真のようにゴミがタンクベントにかぶっていました。
タンクベントも空気を吸うのでタンクベント内にゴミが進入する可能性があると思います。
こまめな清掃が必要かと思います。
またゴミがかぶらないように改良の余地もあるかと思います。
それでは
エアフィルターを点検清掃する際に、タンクベントもいっしょに点検清掃するようにすればいいかと思います。
チェンソーは使用後にしかるべき方法で点検清掃すると故障の頻度がずいぶん減ります。
それでは。